第24章 願い2
「光秀さんもお疲れですよね。お布団使って下さい」
何を勘違いしたのか、起き上がろとうとすることねを布団へと押し戻し、頭を軽く撫でると少し驚いたように眼を丸くした。
「ひいろは目を覚ます。お前のせいじゃない」
ゆっくりと、あやすように頭を撫でながらそう伝えると、ことねの眼は更に大きくなる。
「…で、でも、私のせいで…ひいろちゃんは!」
「勘違いするな、お前のせいではない。拐かした奴等のせいだ」
「だけど…」
「お前を守ったひいろの思いを汲んでやれ。お前が自身を責めていたら、ひいろは何と思う?」
ことねの眼が潤む。下唇を噛み、布団を握る指に力がこもる。溢れ出しそうなものを必死にのみ込もうとしているのだろう。
撫でていた手を止めると、ことねは眼を閉じて大きく息を吸い、僅かな間をおくとゆっくりと吐き出した。心が決まったのか、指先の力も抜けていた。
「ことね」
「…うん、大丈夫。ありがとう、光秀さん」
「あぁ」
「はやくね、ひいろちゃんに会いたい」
「そうか」
「ちゃんと、ありがとう…って伝えたい」
「そうだな」
「それとね」
「なんだ?」
「光秀さんは、やっぱり優しいって教えてあげたい」
「そうか」
「ふふっ…あったかくて、優しい人だよって」
「そうか」
「ふふふっ、照れてる」
「お前がどう思うかは自由だ」
「本当のことだもん」
「物好きだな」
「私が思うのは、自由なんですよね?」
「あぁ、そうだな」
ふにゃりと笑う顔は、いつものことねに見えた。