第23章 願い
「似てなさるんですよぅ」
「…似ている?」
「そう。明智様と嬢は…似てなさる」
言葉の意味が汲み取れず繰り返すと、夜菊が小さく声を出して笑う。
「何がだ?」
「嬢も明智様も、あたしらのことを同じにみてくださる」
「同じに?」
「そう、同じ命にねぇ」
「……」
「嬢は幼い頃からそうでした。嬢の母親がそうでしたからねぇ。同じだって、いつも言ってくれて…。
明智様もそんな気がするんですけどねぇ」
「期待などしない方がいい」
「そうですかねぇ」
そう言うと夜菊は静かに立ち上り、なれた手つきで襷をかけると、大きく一つ手を打った。
「さあさあ、身体が冷えきる前にあたたかい湯に浸かってくださいな」
「随分と世話を焼いてくれるんだな」
「本当は、ゆっくり抱いて、真からあたためたいんですけどねぇ」
「俺の身体が目当てか」
声を上げ笑う夜菊は、今までとは違う顔に見えた。少し低いが耳触りの良い声は、なんの飾り気も偽りもない本来の声なのだろう。
「背中くらい流させて下さいな」
「流すだけか?」
「喰いつきゃしませんよ。それより、嬢のいい話をお聞かせしますよぅ」
「いい話?」
「えぇ、あの娘が慌てて目を覚まして止めにくる位のいい話ですよ」
「そうか。お前がそう言うなら、すぐに目を覚ますだろう」
「そうですとも」
そう答える夜菊の顔は明るいが、ひいろのことを思ってなのだろう、隠しきれない心の揺れが見てとれた。