• テキストサイズ

イケメン戦国 ー とおまわり ー

第23章 願い



赤髪と口に出したからか、今度は殺気を隠そうともせず、一ノ助の眼差しは鋭さを増した。そして、その含みのある物言いに、赤髪へのなおも募る底知れぬ怒りを感じ取れた。

幼いひいろの背を斬った男。
命を奪いかけた男。
その事が一ノ助自身に、どれ程のものを与え続けているのか…

僅かな間をおき、眼鏡を直した一ノ助は何時ものように、表情も気配も隠してしまった。


「では、光秀様。今は何もできることはありませんので、しっかりとご休息をお取りください」

「ほう、役立たずは静かにしていろということか」

「私と同じように、光秀様も姫様やひいろの為にできることはありません。ならば、休める者は休み、備えるのみです」

「備えるのみか…ならば、お前もここで備えているのか?」

「はい。先程、家康様が言われたように、信長様の命を受けておりますから、お二人を取り戻すまではここにおります」

「俺をおいては…」

「行きませんよ」


先程の殺気に確かめてはみるが、一ノ助は言葉通り動き出す気はないように見えた。


「…ひいろの側に付いていなくていいのか」

「…あの子は強い子ですから」

「そうか」


小さく頷く一ノ助は、表情を変えることはなかったが、僅かに声が揺れた気がした。

表情を隠したその奥に、どれ程の思いを抱え込んでいるのか…。どれ程己に言い聞かせ、俺とともにあの場を離れたのか…。

近付いてくる気配を感じ、ふと浮かんだ問は深くなる前に手放した。

/ 382ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp