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イケメン戦国 ー とおまわり ー

第23章 願い



少し間をおき、家康はことねの肌から指先を離すと、一瞬俺の顔を見て小さく頷く。その顔を見るかぎり、ことねは大きな問題もなく眠っているだけなのだろう。分かってはいたが、我知らず静かに安堵の息を吐く。

それが聞こえたのか、家康は大きく頷くとひいろへと向き直った。
ひいろの肌は更に青白くなり、じっとりとした汗を浮かばせ、浅い呼吸を繰り返していた。


「ひいろには何を?」

「ひとまず細心と茜草根の用意を」


翁の声に頷き、家康はその指先でひいろの額に触れる。なにかを呟くように間をおき、ゆっくりと指先を滑らせてその頬をなでた。


「それと…」

「桐葉の用意はございます」


家康の声を待たずに、翁が落ち着いた声で答える。一瞬目を見開いた家康は何かに思い至ったのか、翁へと身体を向ける。


「まずはそれで大丈夫かと…お願いします」

「はい」

家康が静かに頭を下げると、続くように翁も頭を下げる。そして互いに顔を上げ、何かが通じたように頷くと翁が軽く手を打った。それを合図に湯水が運ばれ、ことねとひいろの間には衝立てが用意された。

ことねには娘が一人付き、ひいろのそばに家康と翁が付く。男が隙なく動き準備を進める中、家康も襷を締め翁と言葉を交わし指示をだす。


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