第2章 気づき
「珍しいな家康。ことね以外の女が気になるとは。」
「別に……ただ、ひいろの絵は俺にとって、必要なものだから……」
「ほう……」
「俺にはあんな風に笑いませんよ。だから、光秀さんにはよっぽどなついているのかなと……」
ちょっと拗ねたように呟き、家康は俺から目線を外し、また前を向く。
「くくくっ…やはり妬いてるな。」
家康にとって、ひいろはやはり『特別』なのだろう。ただ、それが恋愛感情かどうかは別だが。
ひいろが、俺と家康で態度が違うのは、分かりきった事だが、家康にはまだ伝わってないらしい。面白いものだな。
「面白がらないで下さい。」
そう言って、家康か立ち上がる。
「ことねならいないぞ。御館様の所だ。」
「あぁ、また囲碁ですか………って、人の心読まないでくれます。」
明らかに嫌そうな顔をして、家康が俺を見下ろす。
「ことねが、今日も派手に転んだと話していたからな。過保護なお前が来るだろうと思った。」
「過保護は余計ですよ。光秀さんこそ、もうことねを監視する必要はないんだから、こんなところで酒を呑むことないでしょ。」
そう言い残し、家康は憮然とした表情で、来た道を戻って行った。