第2章 気づき
~安土城内にて~
空には三日月
霞のような雲の中
時折吹く風が俺の頬を撫でる
いい夜だ
俺は一人酒を呑む
「こんな所で何してるのですか?」
「家康か……見ての通り酒を呑んでいる。」
「はぁ………」
そう言いながら、家康は俺の隣に座る。
「すいませんでした、いろは屋で呑むはずだったんですよね。」
家康は前を向いたまま、そう口にする。
「なんのことだ。」
「まだ店先にいたんで、聞こえてました。」
「そうか。」
俺は杯の酒を呑み干し、動かない家康に声をかける。
「まだ、何かようか?」
「……随分、あの娘がなついてますね。」
前を向いたまま、家康が答える。
「ひいろのことか。……気になるのか?」
「いや、別に……ただ、結構人見知りなのに、光秀さんにはなついてるみたいだから……」
「妬けるか?」
「まさか!?何言ってるですか。」
驚いたような顔の家康が、俺の方を向く。
図星か。