第22章 動く4
いきなり現れた殺気に、天を仰ぎ引き金をひいたが、相手は怯むことなくそのままの勢いで斬り込んできた。
かきーんっっ!!
輪のようなものを銃身で防ぎ、もう片方の手で刀を振るう。僅かな手応えは相手の装束を切り裂いたものだったが、そいつは宙を舞うように後ろへと跳びさった。
少し離れ、茶色い忍び装束に身を包んだそいつは、外側に刃の付いた金属製の輪をくるくると人差し指で回し、品定めでもするかのようにこちらを見ていた。朝日を浴びて、その輪がきらりと光る。その身体は大きくなく、女や童のようにも見えた。顔はわからないが、僅かに切れた頭巾の切れ目から、赤い髪がのぞいていた。
「赤い髪か……」
俺の言葉にそいつの眼が面白そうに変わる。
「だったら、なんだ?」
「話に聞いたことがあったのでな」
「ふーん。俺はお前を知らないが、お前は俺を知ってるのか。知っているのはあいつだけかと思ったけどなぁ」
そう言いながらそいつは、頭巾を脱いで見せた。燃えるように赤い髪が現れ、こちらを見た一之助の顔が変わる。
「なぁ、眼鏡!!」
そう言うと、赤い髪の男は頭巾を一之助の方へと放り投げた。
「お前が…あの時の…赤髪かぁーー!!!」
一之助の表情が一気に殺気立ち、恐ろしい速さで赤髪へと迫り来る。笑いながその刀を持っている輪で何度か弾き返すと、赤髪はふわりと屋根へと跳び上がった。
※武器について※
外側に刃の付いた金属製の「投げ輪」
→『チャクラム』『円月輪』等と呼ばれます。
この輪を手に持ったり、指に引っかけて飛ばす武器で、 正式な投げ方については不明ですが、切れ味は凄まじいものだそうです。