第22章 動く4
「うるさい!お前は黙ってい……」
周りの男達がことねを黙らせようと視線が動いた瞬間、隣で表情なく立っていたひいろが地を蹴った。
同時に、一之助も走り出す。
男達の伸びる手を払い、ことねを縛った紐を握る男の手に手刀を当てると、勢いをそのままにひいろはその身をことねに打ち当て倒れ込む。
宙を舞うように飛ばされたことねは、土煙を上げ走り込んだ一之助に抱き留められ、そのまま二人で倒れ込んだ。
「早く!!」
男達の間に倒れたまま、ひいろがそう叫ぶ。
「くそっ!」
「……」
その声に俺と家康は刀を抜き、唖然としたままの男達をなぎ倒し、体制を立て直した一之助に守られることねの元へと走る。
「……えっ、あっ、やだ!なんで!ひいろちゃん!」
一瞬のことで呆然としていたことねが、状況が分かると必死にひいろへ近付こうと手を伸ばす。一之助がなだめようとするが、男達に引き起こされたひいろを見ると、更に声を大きくする。
「大丈夫です、ひいろお嬢様は大丈夫ですから、ここはどうかご辛抱下さい」
「やだ!なんで私なんか!ひいろちゃん怪我してるんだよ!傷が開いちゃうよ!早く!ひいろちゃん!」
「ことね!黙って!落ち着いて!」
家康がことねの身体を抱き締めるが、ことねの興奮はおさまらない。ひいろの腕を吊っていた布が赤く染まるのを見ると、青白かった顔が更に青ざめた。