第22章 動く4
「光秀さん!!」
後を追うと足を踏み出した瞬間、名を呼ばれ振り向くと家康と一之助が走り寄る。
「二人は?」
俺の問いに、家康は首を横に振る。
「まだです。童らが捕らえられているのを見つけて。薬を盛られていた者もいて怯えも酷くて……取り敢えずこちらについた三人に任せてきました」
「やはり薬を使っていたか」
「抵抗の強い年長者から、みせしめみたいに……」
静かに答えているが、家康の眼には怒りの色が濃く強く現れていた。
ふと見ると、一之助が落ちていた筒状のものを拾い臭いを嗅いでいた。
「先程の音はこれですね」
「あぁ、仲間を呼んだようだ」
「随時と派手なお呼びだしですね」
「随分なのがくるのだろう。呼んだ奴も笑っていたからな」
一之助の眼が鋭くなる。
「……赤髪」
「かも、しれんな」
俺の答えに一之助は軽く頷くと、眼鏡をなおし腰に差している刀の柄を指先で軽く撫でた。
一之助にとって忘れることのできぬ、その者が現れるかもしれない。幼いひいろが己を庇い、その背に今も残る傷痕を残した相手……赤髪。
いつものように無表情の一之助からは、何を思い考えているか読めないが、押さえていたであろう殺気が纏う空気を変えていた。
「先に行かせて頂きます」
「あぁ、奴は右へ向かった」
小さく頷くと一之助が動き出し、その後を家康と俺が続く。