第22章 動く4
障子が開き、内の男達も次々と出てくる。侍姿の者や町人姿の者が刀や匕首を手に、此方の思惑通りに庭に出てくる。
あちこちで怒号や悲鳴、刀の交わる音が聞こえる中、目を凝らし開け放たれた薄暗い座敷の内を見るが、探し求める二人の姿は無かった。
家康達も屋敷へと入った頃だろう
二人の元へとたどり着けただろうか
ひいろの傷は浅いだろうか
そう考えながら、向かってくる男に刀を振るう。
途中、ひいろが血を嫌うことを思いだし、刀の動きを変える。流れ出す血を減らすため、動きを封じる程度の浅傷に止めておく。助け出した後に血の海を見せるのは、忍びない気がしたから。
「光秀様、奴が内に」
供の声に見ると、大声を上げていた男が青い顔をして屋敷の内へと入って行った。
「ここを頼む」
「はっ!」
その場を託し、男を追う。
室内に入り薄暗い内を進むと、鼻先に微かに火薬の臭いを感じた。次の瞬間
ぱっんっっ!!
大きな破裂音が耳に響く。
「ちっ……」
小さく舌打ちし、火薬の臭いの濃い座敷を素早く覗くと、先程の男が反対側の障子を開け外廊下に立ち、空に向かい何かを放ったあとだった。
「仲間でも呼んだか?」
俺の声に驚いたように振り向くが、男はすぐにぬたりと笑ってみせた。睨み合ったまま静かに間合いを詰めていくと男が口を開く。
「だとしたら?」
「斬るだけだ」
またぬたりと笑うと、男は後退りながら手に持っていた筒のようなものを投げつけてきた。叩き落としている間に、男は外廊下を奥へと走り出した。