第21章 動く3
「吉右衛門、顕如の動きがわかり次第知らせろ。三成、策はお前に任せる。」
「心得てございます」
「はい、お任せください」
「光秀、頃合いをみて踏み込め」
「はっ」
「俺のものに、これ以上傷を増やすな」
「…承知しました」
そう答えると、御館様は小さく頷いて口を開きかけたが、声になる前に秀吉の声に遮られる。
「皆、城のことは俺が引き受けた。
政宗、三成、信長様のお役に立つよう、頼むぞ。光秀、家康、一之助、ことねとひいろを助け出したらすぐに報せをくれ!」
「相変わらずだな、秀吉」
「あぁ、母御のお出ましだ」
「なっ!政宗、光秀!お前らの母になった覚えはない!俺は皆を案じて……」
小言を続けそうな秀吉を横目に、家康が御館様に向きなおる。
「決まったのなら行きますよ。あの二人をこれ以上待たせるわけにはいかないので」
家康の言葉と表情に秀吉の小言も止まり、御館様が小さく笑う。
「いいだろう、支度が済みしだい出立しろ。ただし、そちらの指揮は光秀に任せる。よいな、家康」
「…はい」
家康の全身からは殺気が滲み出ているようで、ひりひりとした焦りや怒りが見てとれた。
それ程に抱く強い思いは誰に向けたものなのか。ことねだけなのか…ひいろにもか…
腹の底を何かが掴む。底に沈めていた焦りが、爪を立て這い上がってくる。
そう、ひいろは斬られている…急がねば…