第21章 動く3
「まあ、よい。焦れているのは皆同じだろうからな。
さて、秀吉。日が登ったならば隊を組め」
「はっ!」
秀吉の目に力が宿る。
「政宗、三成。信頼のおけるものを数名連れ、日の出前に西の国境に馬で参れ」
「「はっ!」」
「光秀、家康、一之助。ことねとひいろを連れ戻し、俺の持ちものに手を出した報いを受けさせろ」
「「御意」」
「ことねの事が伝われば、こちらへの目も増えていよう。秀吉、気づかれぬよう気づかせ、時をかせげ」
「ということは、つまり……囮」
「大役だな、秀吉」
俺の言葉に秀吉が睨み返す。
「ただの囮ではない。猿よ、しばしこの城を頼む」
「信長様!まさか…」
「あの男は、俺に会いたがっていたからな。迎えに行ってやらねばなるまい」
「なっ、ことねではなく、顕如の方ですか!!
ならば、信長様のお手を煩わせることはありません!俺が顕如を……」
「異議があるのか?」
「いえ、何も……。お心のままに」
御館様の一睨みに、ようやく諦めたらしく秀吉が静かになる。