第21章 動く3
「手前どもも三成様と同様の考えにございます。
そのため、風の国や糸野屋にさぐりの入れましたが、赤い髪をもつものなどおりませんでした。ただその頃、糸野屋が何者かと取引をしていたのは確かなこと。ただそれ以上は何もわかりませんでした」
「だから、それがなんなの?」
苛立つ家康が噛みつくように問うのとは対象的に、三成が静かに話を続ける。
「随分そちらも注意深いお方のようですね。吉右衛門さんは、この度もその者が現れる、とお考えなのですね」
「はい。なんの確証があるわけでは御座いませんが、恐らく。
ひいろが斬られたあの日、一之助の刀にかからなかった者は、その赤髪のみと思われます。相当の手練れと思われますが、そやつは仕事をしくじっている。ならば、その借りを取り返しに来るはずでございます。糸野屋としても、事情を知っている手練れで自分に借りがあるとなれば、再び呼び寄せるはずです。
ですので、百戦錬磨の武将様方に失礼とは思いますが、どうぞ赤髪にはお気をつけ下さい」
「忠告と言うわけか。だが、そんな楽しませてくれそうなやつなら、是非とも顔を拝みたいものだな。なぁ、家康」
「政宗さんの好きにして下さい、俺は興味ないんで。そんなことより……」
家康が苛立ちをそのままに、御館様に視線を投げる。
「随分とよい顔だな、家康。今度は此方に噛みつくか?」
御館様にそう言われると、家康は小さくて下唇を噛んだ。