第21章 動く3
「早かったな」
「はい。ことね様の様子に何か感じていたようで、あちらも早々に探っていたようです。織田家縁の姫様らしい、との情報をつかませたところ動きが。居場所が判明次第知らせが参ります」
皆の顔が一様に変わり、座敷内の空気も鋭さを増す。
「ならば、そろそろに御座いますね。では、一つ皆様にお話を」
それまで黙っていた吉右衛門が、口を開く。
「一之助が、ひいろが斬られた時の話は致したと思いますが、その時の背中の傷跡についてにございます」
「傷などなかったが……」
呟いた俺の言葉に、吉右衛門が小さく笑う。
「背中を見ただけでは、あの傷はわかりませぬ」
「……どういうこと?」
すぐに家康が反応する。
「あの傷はどういう訳なのか、ひいろの身体が熱をもった時にしか現れませぬ」
「熱?」
眉間に皺を寄せる家康に、政宗が教えてやる。
「女の身体が熱をもつって言ったら、湯に浸かったり、抱かれたりする時だろ」
「なっ、……それが何の意味があるわけ」
家康の顔がまた不機嫌そうになり、政宗は面白そうに片方の口角を上げた。