第21章 動く3
座敷に戻ると、待ち構えていた皆を前にすぐに秀吉が話はじめる。話が進むにつれ、
「ほおぅ、やはり近くにいたか」
「はい、男の話ではその場所に。人身売買の時もそこで女や子供に薬を盛り、抵抗しなくなってから遠くに連れていっているそうです。ですから、二人も……」
そこまで聞くと、家康が静かに立ち上がる。
「……場所がわかったなら、行けばいいでしょ」
「家康様、まだです。もうしばらくお待ち下さい」
「黙れ、三成。もう散々待ったんだ、早くしないとあの娘は…ひいろは斬られてるんだぞ!ことねだって、怖い思いをして……」
「まぁ、落ち着け家康。気が気じゃないのはお前だけじゃない。なぁ、光秀」
焦り歩き出そうとする家康を三成が止め、意味ありげに俺を見ながら政宗がなだめる。
「そうだな、一番の心配性の秀吉が耐えているんだ。見習ったらどうだ家康」
「こら、光秀。こんな時にそんな言い方するな。家康が心配するのももっともな事だ。だがな顕如のこともあるから、時を選ばなくては。わかるだろう、家康」
秀吉の言葉に、不機嫌な顔を更に強め渋々と家康が腰を下ろす。その横に座り直しながら、政宗が襖の方を見る。
「まぁ、そろそろだろうよ」
そう政宗が言い終わらないうちに襖が開き、一之助が入って来る。
「遅くなりました」
そう言い中にいた吉右衛門の隣に座ると、御館様に一礼し話はじめる。
「かかりました」
皆の視線が一気に集まる。