第21章 動く3

「思い出せないと言うから、手伝ってやったまでだ」

「ここまで痛めつける必要はないだろ！こんなんじゃあ、何も話せないだろ！」

「話したくないようだから、話したくなるよう仕向けているんだろ。それの何が悪い」

「光秀！」


胸ぐらを掴んでいた秀吉の手を振り払い、新たな針を手に取ると、それを見た秀吉が俺の前に立ちふさがり、男を背に庇う。


「……なんの真似だ、秀吉」

「こいつが話さないのは、忠義を果たしているからだ。わかるだろ、光秀」

「だからなんだ。生ぬるいことをしている時はないぞ」

「わかっている！わかっているが……」


そう言って黙りこんだ秀吉の顔が苦々しげに歪むと、後ろにかばわれている男が、すがるような目を秀吉に向ける。


「やはり、こんなやり方は間違っている！」

「ならばお前が吐かせてみろ。まぁ、もし吐いたとしてその男を逃がしたところで、こちらへ捕らえられた身だ、味方が手放しで迎え入れるとは思わんがな。ここで死ぬか、味方の手に掛かるかだ」

「光秀！」

「嘘ではないだろ。忠義を果たして、このまま地獄をみるか、裏切り者として殺されるかだ」


前に立つ秀吉をかわし、男に近付く。明らかに怯えた目で俺を見る男に、ゆっくりと笑いかける。