第19章 動く
直接的に与えられるその刺激が快感となり、背骨を這い上がるように頭に響いてくる。聞かせるように音を立てているのか、女の吐息と唾液と俺自身が垂らすものの混じる音が耳に届く。
女は一度離れ口元を拭うと、今度は軽く手でつかみ上下に動かしながら先端だけをゆっくりと口に含み舌先で弄ぶ。
「……くっ……」
堪らずにもれた俺の声に女は動きを止める。
次の刺激を期待していた俺自身は、待ちきれないとばかりにびくりと波打つ。
「まだですよぅ、主様」
呟くようにそう言うと、女はそそり立つものの根元を強めに握り、あやすようにその先をちろちろと舐める。
「ねえ、主様。主様の眼に映るお人は、今どんな顔をしてるんですかぃ。惚けた姿も美しいんでしょうねぇ。それともいい声で啼いてなさるかぇ」
女の言葉がまるで暗示のように、快楽と共に俺の思考をかき乱す。誘い込まれるように思い出すのはひいろのことばかり。
強く射ぬく眼、柔らかな笑み、流れる黒髪、白いうなじ、染まる肌、わずかに知った温もり、甘くない花のような香り……
香り……
ひいろの香り……