第19章 動く
うなじから首筋へと啄むように女の唇が動き出す。視界を奪われたからなのか、それともこの女のせいなのか、肌への感覚がいつにも増して快楽へと導いていく。
俺の存在を確かめるかのように、女の唇が身体中を這いまわり、指先で舐めるように全てに触れていく。与えられる刺激に、身体の奥がざわざわと波うちはじめる。
ひいろの染めた手拭いで目隠しをされ、身体中に指が這う。いつかのひいろとの行為を思い出し、いるはずのない温もりを感じる。そうであればと願っているのか、女の指がひいろのものであるような妙な錯覚をおぼえ身体が反応する。どれ程焦がれていたのか、閉じられた瞼の中に映るのはいつかのひいろの姿ばかりだった。
部屋に響くのは、女の吐息と肌の触れ合う音。女は時折大きな音を立て俺の肌を食むが、俺はされるがまま女に触れることなく受け入れる。女は何も返さぬ俺に飽きたのか上半身への愛撫を止め、徐々に下へ下へその動きを進めていく。
女が俺の前へと座る気配がし、小さく笑う声がもれる。
「ふふっ……こんなによだれを垂らしてくれるなんて、可愛らしい主様だねぇ」
そう囁くと女はそそり立つものを優しく握り、根元から上へ上へと流れ出るものを逃さぬようにゆっくりと焦らすように舐め上げる。