第18章 【番外編】いろは屋~その3~
「そろそろ催促がくるだろうから、絵を女将さんの所に持っていておくれ。早く欲しいと旦那に頼まれてるみたいだから」
「はい、分かりました。姉様、ありがとうございました。なんだか少し胸の靄が晴れました」
「そうかい、それは良かったねぇ」
絵を手に取り頭を下げ、ひいろは部屋を出ていった。程なくして襖が開き、いろは屋の番頭が遊女の部屋へと入ってくる。
「どこから聞いてたんだい?番頭さん」
「ほどほどの所です」
「そうかい」
「えぇ、夜菊」
「今日はその名で呼ぶんだね」
「はい」
夜菊と呼ばれた遊女は小さくため息をつき、はだけていた着物を直す。
「で、今回は何処で誰に抱かれればいい?」
「こちらの店で、つなぎを」
紙を二枚懐から出し、一枚を夜菊へと渡す。夜菊は目を通すと、たばこ盆にくべてあった火ですぐに灰にした。
「つなぎだけかい?」
「えぇ、こちらの方に」
もう一枚の紙を開くと、そこには男の絵が描かれていた。夜菊は絵を受け取り目を通すとすぐに番頭に返した。番頭はそれをゆっくりと懐へ戻す。