第17章 離れる5【光秀編】
ーーー 三日後
三日後と言った御館様の言葉に従い、いろは屋へと出向く。
この三日間は政務に追われ、あの日のことは余り考えないでいた。いや、わざと意識の外にしていたのかもしれない。
ことねと過ごした時間があったからだろうか。ひいろに向かっていた熱きものが、毒でも抜かれたかのように、その熱が徐々に引いていった。
やはり青臭い若造ではなかったようで、正直少し安心していた。女のことで自分自身が乱されるなど、今更俺らしくもない。
いろは屋の少し前で足を止める。
だが今日は、ひいろのことを考えない訳にはいかない。これから、いろは屋に入るのだから。
秀吉には、ああは言ってはみたものの、本当に俺の声で表情を変えていたのか。もしそうならばそれは何の意味を持つものなのか。気にならないわけがない。
小さくため息をつき、歩みを進める。
とくりと、胸が小さく疼いた。
「お待ちしておりました」
店の前を掃き清めていた小僧が先触れしたのか、店先に立つと中からすぐに声がかかり、出迎えられた。