第17章 離れる5【光秀編】
「そうしてくれよ。じゃないとまた心配が増える。ただでさえあの時のひいろの様子は気になるからなぁ。お前でなければ、やはりことねのことか……」
「家康がことねに好意を持っているのは、ひいろも気付いている。その辺りのことだろう」
「そうか。そうなのかな、やはり……だからひいろは……」
思案気な顔をして秀吉が押し黙る。
ことねについて思いに大小あれど、皆が好意を持っていることは互いに分かっていること。ただ御館様の持ち物であるとの認識の元、それぞれがそれぞれの距離を保ち接している。勿論秀吉も、兄ではなく男としての思いがあるだろう。
「色んな女の兄役ばかりしていると、兄以外になれなくなるぞ。じやぁな、俺は行く」
「なっ、何を言ってるんだ、光秀!おい!光秀」
少し怒ったように俺の名を呼ぶ秀吉を残し、その場を足早に後にする。先程から胸の奥でふつふつとわいてくる思いを、片付けてしまいたかったから。
ひいろが家康に思いを伝えた。
秀吉に聞いたその事実が繰り返し頭の中を駆け巡る。ひいろの思いを聞いた後、家康はひいろの側にいた。ひいろの体調が悪いとはいえ、あの家康が側にいたのだ。突き放さなかったということは、家康の方にも何かしらの思いがあるのだろか。それとも……?
「まさかな……」
自分に都合の悪い想像をそんな言葉で打ち消して、小さく頭を横に振る。