第17章 離れる5【光秀編】
「お前、ひいろが家康のことを好いていると知っていたのか?」
「あぁ、絵を描いている時に話を聞いた」
「ひいろが話したのか?お前に?」
「あぁ、そう言うことだ。だから知っている。だが、お前はなぜ知っているのだ秀吉」
「それは……」
ばつの悪そうな顔をして秀吉が話し出す。
「二人の声が聞こえて行ってみたら、ちょうどひいろが思いを伝える所でな、出るに出れなくて……」
「のぞき見たわけか」
「なっ!! 俺は心配で……。でもまぁ、そうだな。いいわけはしない。でも、本当に心配してだな」
「兄、いや母心か。お前の場合はな」
「なんとでも言え、ただな……」
「なんだ」
ふっと秀吉が小さく笑う。
「ひいろが必死に伝えていたんだ。自分の思いを必死に。そこがなんだか嬉しくてな。
ひいろのことよく知っているわけではないが、一之助の話を聞いた後だからか、自分の為にも一生懸命になれるんだと思えたら、あいつのこと守ってやりたい気持ちが強くなってな。それに家康もはっきりした答えではなかったが、ひいろのことを考えて、受け止めてやってるようではあったから、随分と成長したと思ってなぁ」
「…やはり、母のようだな」
「せめて、兄にしてくれ。まぁ、人の恋路についてとやかく言うつもりはないが、二人なりの答えが出せればいいんじゃないか。だから光秀!お前は変なちょかいを出すなよ」
「変なちょっかいは、出すことはないがな」