第17章 離れる5【光秀編】
「家康、ご苦労だったな。ひいろは大丈夫か?無事に帰れたか?」
「ちゃんと裏門までは送りましたよ。迎えがいるんでしょ。ひいろは熱も落ち着いてきて、ちゃんと歩けてました」
「そうか、良かった。世話になったな家康」
「ちょっ、秀吉さん。そういうのはいいですから」
嬉しそうに手を伸ばし、秀吉が家康の頭を撫でる。家康はその手を迷惑そうに払い、不機嫌そうな顔を見せるが、本当に機嫌が悪いわけではないらしい。
その顔を見れば、ひいろの様子もひどく心配することはないかと思われた。
家康が送って行った、ということは面白くはないがな。
「番頭…一之助は、まだいますか?」
「あぁ、先程の座敷に御館様といるはずだ」
後から来た俺の言葉にちらりと視線を寄越すも、家康はすぐにその目をそらした。その瞳の奥に何かが見えた気がした。
「ひいろの報告と薬を渡したかったので」
「そうか、それはいい。一之助も喜ぶだろう」
「じゃあ、行きます」
そう言うと、足早に家康は離れて行った。
家康の姿が見えなくなった後、再び歩き出した俺の背中に秀吉の声が刺さる。
「光秀、ひいろに何をした」