第2章 気づき
ひいろ「光秀様、私の願いを叶えて頂き、ありがとうございます。光秀様には、お酒を召し上がって頂き、その間に私は絵を描かせて頂きます。」
ひいろは、少し俯くように頭を下げた姿勢で、目を合わせることなく俺にそう言った。
光秀「成る程な。俺はお前を肴に酒を飲めばいいわけか。ならば、手酌でよい。俺は好きに飲む。その方がお前も絵に集中できるだろ?」
空いた杯に、酒を注ごうとする番頭を目で制し、徳利を受け取る。
光秀「俺もこの方が気が楽だ。」
ひいろ「ありがとうございます。そうして頂けると嬉しいです。」
ひいろは、少し視線を上げて俺を見て、番頭へ頷いてみせる。番頭は、表情を変えることなく頷き、退室する。
部屋の中は2人だけになった。