第15章 離れる3【光秀編】
「お前に言われると、本当に戻ってきた気がするな」
「そうですか?良かった。私はおかえりなさいが言えると安心します」
「そうか」
「みんな無事に帰ってきて欲しいから『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』はちゃんと伝えたいんです。光秀さんは急にいなくなるから特にですけど」
「心配してくれるのか?」
「もちろんです。みんな大切な人ですから」
「ことねが……いや、ことねや御館様がいるから、俺はここに戻ってこれるのだろうな」
「待ってますよ。だからちゃんと戻って来てくださいね」
「そうだな」
この光にどれ程助けられているのだろう。知らなければ良かったあたたかさだが、知ってしまえばそれを求めて戻って来てしまう。
例えそれが自分だけのものとならないと分かっていても、戻らずにはいられない。俺はどれ程の思いをことねに抱いているのだろう。
ただ俺は……
側にいられれば……闇から戻るため
闇から……戻るため……
光を目指し……戻るため……
それとも……ただ、ただ側にいたい……だけ
ふと、ひいろの香りがした気がして、少し開けたままにしていた襖を見る。
すっとそれが開けられ、秀吉の顔が見える。