第15章 離れる3【光秀編】
「お前は何も考えず笑っていろ」
驚いたように目を見開くことねの頬から指を離すと、不満そうに両頬を撫でながらもその表情が和らいでいく。
「ふふふっ、ありがとう 光秀さん」
「何がおかしい?」
「やっぱり優しいなぁと思って」
「思い違いだ」
「違いませんよ。ふふふっ」
ふにゃりとした微笑みを見せた後、ことねの視線はまた絵に向けられる。
「私の顔、どんな風に見えてたのかなぁ」
「そのままだろ」
「そうなんですけど。信長様の話を聞いたせいか、変なこと考えちゃって……信長様とひいろちゃんは……その……大人の関係なのかなって」
「ほう」
「ひいろちゃんと仲良くなりたいのは変わらないけど、色々と意識しちゃって、それを誤魔化すみたいに一方的に話してばかりで……きっと私、嫌な顔してたんだろうなって」
「なるほど、そんなことか」
「そんなことって!……まあ、武将様には大した話ではないでしょうけど、私にとっては割りと気になることなんです!」
「そのことなら、おそらくひいろが幼い頃のことだ」
「えっ!」
「御館様とひいろは、随分昔からの知り合いらしい」
「じゃあ……」
「お前の言う大人の関係ではない、だろうな」
「……良かった」
「そうか」
「はい」