第15章 離れる3【光秀編】
ひいろを探し出すのは自分だと思い込み城内を歩いたものの、その影さえつかめず元の座敷へと足を向けた。
「……ひいろ」
小さく名前を呟けば、胸の奥がゆらゆらと揺らめく。『俺が側に入れば……』という独りよがりな思いは、妙な焦りと虚しさを胸の奥へと植え付けた。
誰にも届かぬため息をついて、戻っていればとの期待を込めて襖を開ける。
「おかえりなさい」
待っていたのはことねだった。
俺が一人と分かると、少し寂しそうに笑って見せた。
「ひいろちゃん、まだなんです」
「そうか」
ことねの手には顔の塗りつぶされた自分の絵があった。その絵に目を落とし、寂しそうにことねが呟く。
「なにがいけなかったのかな」
「ことね?」
「私、ひいろちゃんの絵をずっと見てたから、会えたのが嬉しくて……迷惑だったのかな」
「お前が原因とは限らないだろ」
ことねが顔を上げ俺を見る。
「何も分からないうちから自分を責めるな。ひいろのことは本人に聞くまで何も分からない。余分なことに知恵を使って、辛気くさい顔をするな」
「なっ!!………にゃんで……」
言い返そうとすることねの両頬を摘まんで引っ張る。