第14章 離れる2【家康編】
「お前の気持ちは分かったから、まずは顔をあげような」
優しく諭すように声をかけ、ひいろの肩に触れる。それでもなかなか顔を上げないひいろに、今度は優しく頭を撫でる。
「ほら、それじゃあ話もできないだろ。お前は体調悪くても頑張ってたんだろ?話せば皆分かってくれる。だからまずは戻ろう」
優しく声をかける秀吉さんの横に俺も並んで跪く。その気配を感じてか、おずおずとひいろが顔を上げる。額には落ち葉と土がつき、泣いてはいないものの目と鼻が赤くなっていた。
「ほら、顔かして」
懐の中からひいろに返すために持っていた手拭いを出し、額の汚れを拭う。
「まったく、なにやってんの」
「……ごめんなさい」
俺に対しひいろが、前よりも少し砕けた感じで話すようになってきたのが、少し嬉しかった。
また恥ずかしそうに俯こうとするのを、顎をとり上を向かせ他の汚れも払い髪を撫で整える。
驚いたように俺の顔を見つめるひいろの鼻を摘まむと、さらに驚き目を大きくして頬を染めた。
「ほら、早く立って」
「はっ、はい」
急いで立ち上がったひいろの着物の汚れも落とし整える。