第14章 離れる2【家康編】
「ひいろは、体調が悪いみたいです。今も熱があるから早く戻ろうと……」
繋いでいる手を離そうとするひいろの手を掴み直し、居なくなった経緯がそこにあるように話してみる。
繋いだままの手の言い訳のみたいに聞こえるかな……
「なに!熱が!それは大変だ。大丈夫なのか、ひいろ?気分は悪くないか?痛いところは?」
大袈裟に見えるほど慌てた秀吉さんは、ひいろに近づき額に手を当てる。その行動に驚いたひいろは、今度こそ俺の手を振りほどき慌てて、その場に座ると地面に額が付くように頭を下げる。
「申し訳ございません!」
「なに!ちょっと、ひいろ」
「ひいろ!どうした?」
慌てる俺と秀吉さんに、しっかりとしたひいろの声が届く。
「姫様はじめ、皆様にご迷惑とご心配をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません。謝って済むものではないと重々承知しておりますが、どうかお詫びさせて頂いたのち、もう一度姫様を描くことをお許し下さい。お願い致します」
頭を下げたまま動かないひいろを見て、俺と秀吉さんは顔を見合わせる。
許可しなければ動かない気なのだろう。『絵師として……』そう焚き付けたのは俺だから、俺がなんとかしなくちゃか。
そう思った俺よりも一瞬早く、秀吉さんがひいろの前に跪く。