第14章 離れる2【家康編】
宙で止まっていた手の行き先をやっと決め、手を伸ばす。おろした先はひいろ頭。
ゆっくりと、軽く落ち着かせるようにその髪を撫でる。
結局言葉なんて、答なんて出せないまま、それでも何か伝えたくて、触れたくて、無言のまま撫でてみる。
ずるいなんて分かってる、分かってるけど、このまま誰かにひいろを渡すなんて出来ない
ずるい男で構わない、今はただ……
びくりとひいろの背が揺れて、長い髪がさらりと落ちる。ゆっくりと顔を上げ俺と目が合うと、ひいろは目を見開き今度は驚いたように起き上がる。
「もっ、申し訳ありません」
「怪我はない」
「はっ、はい……」
返事をしてまた俯くひいろの頬に手を伸ばす。頬に触れ、そのまま額へと手を伸ばす。
慌てて立ち上がろとするひいろの手を掴む。
「いつから?」
「大丈夫です」
「いつからなの」
「……今朝からなんとなく」
さっき触れられた時、ひいろにの指先から伝わってきていた熱が気になってた。
ひいろの言葉に一瞬心を持っていかれていたけど、直接触れてみれば答えは明白だった。
「熱、上がってるでしょ」
「そのようです……」
興奮して一生懸命に話しているからかと思ったけど、触れてみればはっきりと分かる。
「でっ、でも、熱に浮かされていたわけではありません。私は、家康様のこと……んっ!」
「黙って」
今度は俺が指先でひいろの唇に触れる。