第14章 離れる2【家康編】
「家康様のことが好きだから、家康様の側にいることね様のことが羨ましかった。ことね様のことを話される時の、家康様の眼差しがあたたかくて、それが私のものになればといつも願っておりました。
だから……どなたかの代わりでも、ことね様の代わりでもいいと思って……」
懸命に話すひいろの頬は更に紅潮し、その必死な様子はいつもとは別の顔に見せる。いつもより饒舌に、見せたことのない熱情をありのままぶつけてくる。
止まったら、そこで全てが終わってしまうかのようにひいろは話し続けた。
「でもやはり、嫌なのです。誰かの代わりなど。
誰かではなく、私を見て欲しい。
私のことを欲してほしい……
こんな想い届くはずないと分かっています。でも、どうしても、家康様に伝えたかった。家康に知って欲しかった……」
そう言いながら、両目に溢れる涙をこぼさないよう必死になるひいろが、とてもいとおしく思えた。
ひいろの想いに答えてあげたい、でも俺の中にはことねがいる。
ことねが……ことねが……いる
信長さんを想い続ける ことね……が……