• テキストサイズ

イケメン戦国 ー とおまわり ー

第14章 離れる2【家康編】




「胸が……苦しくなるので……」

「苦しい?」

「だっ、大丈夫です」


俺の声が心配そうに聞こえたのか、慌てたように顔を上げたひいろの頬は、うっすらと染まっていた。

ひいろと視線が絡み合う。
潤む瞳、染まる頬、濡れた唇。
少女ような、女のような……もっとこの続きが見たいと思わせるような艶やかな顔。

ふと、祭の時に見たひいろと光秀さんの姿を思い出す。お互いに浴衣を着て、微笑み合っていた二人の姿。


光秀さんに、出会ったから?
光秀さんには、見せてるの?
光秀さんには、ゆるしているの?
光秀さんには……


喉元がぎゅっと絞められるような感覚がして、それを払うように大きく息を吸い、吐き出す。


「なら良かった」

「……はい」


絞り出すように出した俺の言葉に、ひいろはそう答えてまた俯き、小さく開いていた唇を閉じる。そしてまた少し開いては、閉じる。何度か繰り返されるその動きに、目が離せなくなる。

あの日、あの唇に口づけをした。
何かに引き寄せられるように奪っていた。
心の中にはことねがいるのに、どうしても欲しくて気が付いたら、唇を重ねていた。


『どなたかの、代わりでも……
私は、いいのです』


そう言って、泣き出しそうな顔で微笑んだひいろ。
あの時は確かに他の誰かではなく、ひいろが欲しかった。ひいろの唇が。

/ 382ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp