第2章 気づき
吉右衛門「越後の猿飛 佐助という方に似ているそうですね。」
光秀「あぁ。」
吉右衛門「信長様があれほどまでに表情を崩されて話されるとは……本当に似ているんでしょうね。」
吉右衛門は、その時のことを思い出したのか、口元に笑みを浮かべた。
吉右衛門「信長様は、あの姫様が現れて変わられました。人間味が増したと申しましょうか……また男振りが上がられましたな。」
光秀「そうだな。」
吉右衛門「光秀様や、他の武将さまも……いやいや、城全体に笑顔が増え、華やかになりました。」
光秀「……それは褒め言葉か?御館様がひいろの絵を御覧になって、そのうち、その姫の絵をと所望された。」
吉右衛門「それは嬉しいことでございます。ありがとうございます。」
吉右衛門が頭を下げると、隣の番頭も同じように頭を下げる。こちらは、表情も姿勢も崩さずにいた。
吉右衛門「では、番頭さん。ひいろを呼んで来てくださいね。」
番頭は、もう一度頭を下げて部屋を出た。