第13章 離れる【光秀編】
御館様の問いに、最後は小さく呟くようにことねが答える。隣の秀吉がすかさず世話を焼き、幼子をあやすようにことねの背を小さくさすりながら、皆の輪の中に座らせた。
それと同時に、一之助が探しに行く為の許しを願うように御館様を見る。その視線を受け、御館様はことねを見て小さくため息をついた。
「小娘が何を考えたか。秀吉、光秀、家康、ひいろを探せ。イチ、お前はここに。これ以上その顔を晒すな」
御館様の言葉に一之助は、表情を変えることなくその場に座り直し、命を受け立ち上がった俺達に頭を下げる。
「御迷惑お掛けし、申し訳ございません。ひいろお嬢様をよろしくお願い致します」
先程の話が終わったからなのか、それともことねが現れたからなのか、一之助がひいろをお嬢様と呼び直した。特に意味も無いのかもしれないが、何となく引っ掛かり一之助に目をやると視線が合う。
何故だか瞳の奥で一之助に嗤われている気がした。奴の表情はぴくりとも変わっていないのに……。
「ことね、旨い茶を淹れてやるからな」
そう政宗がことねにかける声を聞き、我にかえる。残る政宗と三成が、甲斐甲斐しくことねの世話を焼きはじめた。
「光秀、行くぞ」
「あぁ」
秀吉に呼ばれ、動き出す。後で一之助が、頭を下げた気配がした。