第13章 離れる【光秀編】
「おっ、お話し中にごめんなさい」
静かに開いた襖から、ことねが不安そうに顔を見せる。
「どうした?終わったのか?」
すぐに秀吉が立ち上り、ことねへと近づく。ことねは軽く首を左右に振り、中に一歩入ると突然勢いよく頭を下げた。
「あの、ごめんなさい!急にひいろちゃんが部屋から飛び出して行っちゃって……私、追いかけられなくて……ごめんなさい」
ことねの言葉に、すぐに一之助が立ち上る。家康も片膝を立て、動き出そうとした瞬間、御館様の声がかかる。
「ことね、何故追いかけぬ」
静かに届く御館様の声に、ことねはすぐに顔を上げ一度下唇を噛み口を開く。
「ひいろちゃんが、とても悲しそうな眼をしてて……なのに、何も言えなくて……」
「絵を描いていたのであろう」
「はい……ひいろちゃんは、一生懸命描いてくれていました。私は、また会えたのが嬉しくて、描いてもらっている間中、色々話しかけちゃってました……迷惑だったのかな……」
悲しそうな顔になったことねの背に、隣の秀吉が支えるように優しく手を添える。
「何を話した」
「今の生活の事とか、皆の事とか……絵の事とか……私が一方的に話し掛けてました」
「それだけか」
「はい……ごめんなさい……私が……悪いんです」