第13章 離れる【光秀編】
「顕如自身は深く潜んでいるようで、なかなか尻尾を掴めないでいるが、かわりに奴らが近づこうとしている者たちは幾つか分かっている。糸野屋もその一つだ」
俺の言葉に一之助が静かに頷く。
「糸野屋にさぐりを入れたところ、知恵を授けている者がいるまでは判ったものの、なかなか姿が掴めずにおりました。そんな折りに、今まで神仏など見向きもしていなかった糸野屋が、寺参りや托鉢などで僧と接する機会が多いことに気がつき、信長様が話されていた顕如の名を思い出したのです」
「そこで繋がるわけか。で、奴等は何処だ?」
政宗が、獲物を見つけたような瞳で俺を見る。
「残念だが先程も言った通り、潜んでいる場所までは掴めていない」
「こちらも顕如本人は確認できておりません。糸野屋とのつなぎは下の者たちでしょうが、用心深く苦慮しております」
殺気は行き場をなくし、徐々にその影を弱める。
「糸野屋は風の国を手に入れること。顕如は軍資金集めと、使いやすそうな駒を増やすこと。そのあたりで、互いの利害が一致した、ということですか」
「確かに薬種問屋がいれば、都合がいいだろうからね。金も薬も毒も色々と」
思案顔の三成の言葉に家康が頷く。
「何にせよ、奴等が動き続けていることに変わりはない。早々に居場所を見つけるのはもちろんだが、何を企んでいるかを知るのも先決だ。まず信長様のことを第一にだが、無駄な血が流れるのも避けたい」
苦々しげに話す秀吉の言葉に、皆同様な面持ちとなる。