第13章 離れる【光秀編】
一同が次の言葉を待っていると、小さなため息が聞こえる。
「……それが、さっきの糸野屋に繋がるわけだ」
「家康様のおっしゃる通りです」
「糸野屋は毒物の扱いも多い問屋だからね。上手く使えば毒も薬になる。でも本来の目的で使おうとすれば……徐々に弱らせるのなんて、糸野屋位になればお手のものだろうからね」
「そのようです。少し前から糸野屋から側室への届け物が続いておりますので、恐らくはその中に。ただ、証拠は御座いません」
一之助の言葉に皆、難しい顔となる。
「しかしそれがなぜ、今、なんだ?」
政宗の言葉に皆の視線が動く。それを受け、一之助が意味ありげに俺を見る。
「何故でございましょうね、光秀様」
一之助の言葉に、驚いたように秀吉が俺を見る。
「残念だな秀吉。関係があるのは俺ではなく、俺が追っている男だ」
「なっ、別に俺は……。それより、お前が追っている男と言えば……」
「顕如」
その名に場の空気が一変する。
一之助は相変わらず表情を変えず、御館様はひとり口角を上げ面白そうな顔をされる。他の者は不意に出たその名に、驚きと殺気だった表情を見せる。