第13章 離れる【光秀編】
場が静まると三成がすっと手をあげる。皆の視線を受けると軽く頭を下げ、一之助に向い話はじめる。
「つまり、番頭さ……イチさんは、信長様のお若い頃からのお知り合いで親しい仲にある。そしてひいろさんとは、ひいろさんが幼少の頃に拐かされそうなった折りに知り合われ、その後いろは屋さんにお世話になり、現在も番頭としていろは屋にいらっしゃる。と、いうことでよろしいですか?」
「はい」
「そして、ひいろさんは『風の国』と呼ばれるその国の血筋を受け継ぐものだが、その真実を知る者は少ない。以前ひいろさんを狙った者は、そうとは知らずひいろさんを手駒として使おうとしていた」
「はい」
「成る程、分かりました。あとは何故この話を我々にされているかと言うことですが、それはひいろさんが今また狙われいる、しかも私達の知る者がそこに関わっている。と、いうことではありませんか?」
「流石、三成様」
「では、やはり」
「はい」
三成にそう答えると、一之助は中指で眼鏡を押し上げた。
「風の国のご嫡男は、三月ほど前から病のため臥しておりましす。そして先日、殿様も同じ様に病に臥せられました」
「流行り病か、あるいは……」
「三成様のお考えの通りだと思います。私どもでは何者かが関わっていると考え、動いておりました」