第12章 【番外編】揺れる~家康編~
「この頃お忙しいみたいで、なかなか会えなかったから……信長様、元気かな?」
「あの人は大概元気だよ。ことね、夜も呼ばれなかったの?」
「うん。この頃は呼ばれない。囲碁したりお話するだけだから……飽きられちゃったかな?」
「……えっ、ちょっと待って……それ、本気で言ってんの?」
「何が?」
ことねの表情は変わらず、ぽかんとした顔で俺を見る。
ことねが夜、信長さんに時々呼び出されているのは知っていた。ことねの惚れようはもちろん、信長さんのことねに見せる執着を考えれば、二人は当然そういう仲になっているものと思っていた。
が、違ったらしい。
これは何を意味するのか……俺が思っている以上に、信長さんのことねに対する想いが強いのかもしれない。まだ、俺の入る隙があるのか、それともないのか……今ならまだ間に合うのか……