第12章 【番外編】揺れる~家康編~
「ことねこそ、久しぶりにあの人に会えるから、嬉しいんじゃないの?」
「えっ! あっ、……うん」
俺の言葉に素直に頷き、ことねが頬を染める。ことねに、こんな顔をさせるあの人は……信長さん。
唯一無二の漢。天下人となるべきその背中を俺は追い続けている。いつか、必ず追い越すために。
そんな人だから、ことねが心を奪われるのも分かる気がする。
いつかことねのことも奪ってやりたいと思っていたけど、結局はことねが幸せならば、それが一番だとの答えにたどり着く。今の俺では、あの人を越えてことねを幸せにするには、まだ足りない。
それに、ことねの心はあの人に捕らわれたまま、入り込む隙さえ見つからない。
今日も、最近会えない愚痴を聞かされている所だった。