• テキストサイズ

イケメン戦国 ー とおまわり ー

第11章 揺れる




「お嬢様、光秀様が呆れておられますよ。信長様、お嬢様で遊ぶのも大概にして下さい」


一之助がひいろと御館様の間に入るようにして会話を止めると、一之助の肩にのる黒が羽を大きく広げ、バサバサと動かして見せる。そして「もうお開きに」とでも言うように一声鳴き、その場を納める。


「黒がそう言うならば、終いだな」


にやりと笑う御館様の言葉を受け、それぞれが微笑むような、苦笑いのような表情をうかべ、帰り支度をはじめる。

ふとひいろを見ると、ちょうどこちらを見ていたのか、目が合う。
悪戯を見つけられた童のような顔をしたかと思うと、次の瞬間には柔らかな微笑を浮かべて見せる。いつにもまして表情の変わるひいろに、胸の奥が甘く疼く気がして、年甲斐もなく青臭い若者の頃のように視線を外す。

久しぶりにひいろに会い、ここまで自分の心が揺れるとは思いもよらず、空を見上げため息を吐く。
御館様と一之助が、そんな俺を見ているとは知らずに、空を見上げたまま心の揺れが静まるのを待っていた。




帰り支度が整い、俺達が馬に乗ると、見送るためにひいろと一之助が寄り添うように並び立つ。

ただそれだけの事なのに、ひいろの隣に俺ではない男がいるというだけで、また胸の奥に青き炎が灯り、ちろちろと揺れ動くのを感じた。


/ 382ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp