• テキストサイズ

イケメン戦国 ー とおまわり ー

第11章 揺れる




「そんな眼を……しているのか?」

「はい」


小さくひいろが答え、重ねている手に微かに力が入る。


「悲しくて、優しいお顔です」

「そうか」

「はい」


小さくひいろが笑う。
先程の泣き出しそうな顔ではなく、柔らかく慈しむような笑み。

優しい顔とは、今のお前の顔なのだろうな。
そして、今の俺の顔は、表情をつくれずにいる素のままの顔。ひいろがそう見えるのなら、そういう顔なのだろ。


「悲しくも、優しくもないが……」

「はい」


ふふふっと、小さく声に出してひいろが笑う。つられるように俺の口角も上がる。


「今は優しいお顔」


そう言って頬笑み続けるひいろが愛らしくて、抱き寄せて腕の中に閉じ込めてしまいたくなるが、それも叶わず、俺の手の上に重ねられていたひいろの手を掴まえ、握ったまま俺の胸の上におく。


「光秀……様?」

「初めて会ったあの日から、お前は確かに俺のここに存在する。お前が何に憂いを感じているかは分からんが、お前のいない日常など、俺の中にはもう存在しない」


一瞬驚いた顔をしたひいろが、すぐに笑みを深くする。


「ずいぶんと、大袈裟ですね」

「そうか?」

「はい。でも……」

「でも?」

「ありがとうございます。私の中にも光秀様のいない日常など、存在しません」


視線が絡み、ひいろの瞳の熱が強くなる気がした。そして、俺の身体の熱も。


/ 382ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp