第11章 揺れる
ひいろが、俺を見る。
俺が、ひいろを見る。
眼が合う。
強い瞳が俺を見る。
強く、真っ直ぐな瞳が、一瞬揺れる。
そして、また戻る。
口元に微笑を浮かべ、ゆっくりと近づいて来る。
ひいろが、俺の前に立つ。
「お久しぶりです、光秀様」
男の姿をし、もちろん化粧もせず、少年剣士のように凛々しい姿なのに、最後に会った時よりも女を感じるのは何故だろう。
「あぁ、久しぶりだな」
心の揺れを悟られぬよう、表情を崩さず答えてみる。本当は、すぐにその頬に触れたいと、指先が疼いているのに……。
いったん止まったひいろの足が、すっと一歩前に出る。指先を俺の肩に乗せると、ひいろは背伸びをし、俺の耳へと囁きを流し込む。
「おかえりなさい」
そして、俺の頬へ口づけをした。