第11章 揺れる
「だから、変に動いて俺に妙な思いを抱かせるな」
「なんだ、また小言か」
「あぁ、そうだ。小言が言える相手がいなくては困るからな。お前も俺の小言がなくては、物足りないだろ?」
「そうでもないがな」
「なっ、て……まぁ、お前らしくていいか」
そう言って笑う秀吉の顔は、気持ちの良いものだった。俺自身「ふっ」と力が抜け、悪くない心持ちとなる。
「光秀」
御館様の声に、身体に力が入る。
「はい」
「ひいろの相手をしてやれ。秀吉はこれへ」
「「はっ!」」
そう言うと俺と目配せをし、秀吉が御館様の元へ行く。そしてひいろを残し、三人は少し離れた場所で話はじめた。
一瞬、信長様が俺に視線を合わせ、意味ありげに口角を上へと引き上げる。なんの意味を含んでいるのか、詮索するのはやめておこう。それよりも今は、久しぶりに会えたひいろの強い瞳と向き合いたい。