第11章 揺れる
御館様が目の高さまで上げた右手を、勢いよく前へ伸ばす。その合図を受け若侍が、隼を宙へ放す。
隼は高く舞い上がると、勢いよく地平を目指し下降する。何度か同じことを繰り返すと、若侍が呼子を使い指示をだし、今度は低空飛行をはじめた。
「ほう、人や犬ではなく、あの隼が獲物を追うわけか」
「あぁ、鷹と隼だけを使って狩るんだ。なかなか、面白いだろ」
自分のことのように、嬉しそうに話す秀吉の目線の先で、隼が場所を替え、何度目かの低空飛行をはじめる。その瞬間、御館様の左腕が動く。羽黒が宙に舞い、隼の去った後の草の間から、雉が飛び出すのを見計らったかのように急下降し捕獲する。そして、捕獲した雉が掴み、悠然と御館様の所に戻ってくる。戻ってきた羽黒に餌を与え、御館様が雉を受取り秀吉に渡す。
「相変わらず、お見事でございました」
「赤もよく育っているようだな。羽黒との間が、またよくなっている」
そう言って、御館様が若侍達に軽く手を上げると、二人が頭を下げる。
「実に興味深い方法でした。あの者達の使う、他の鳥も見てみたいものです」
俺の言葉に御館様が軽く笑い、隣で秀吉も面白そうな顔で俺を見る。
「光秀、あの者達に見覚えがないか?」
「あの二人にか?」
「あぁ、お前らしくないな。よく見てみろ」
秀吉の言葉に、視線を移し下の草の原に立つ二人をよく見る。