第11章 揺れる
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秀吉の小言を聞き流し、馬を走らせる。
空は高く、雲ひとつない穏やかな日。時おり吹く秋の風が心地好い。
あの後、秀吉に散々小言を言われ、用は何かと尋ねれば、御館様の供をしろとのことだった。お忍びで鷹狩りに出られるとのことで、秀吉と二人で供につく。
前を行く御館様を追いながら、隣に並んだ秀吉は、相変わらず小言を繰り返す。いい加減飽きてきたので、馬の速度を上げ、御館様の隣に並ぶ。
「光秀、小言は済んだか」
「いえ、飽きました」
「ふっ、相変わらず長いな」
「はい」
「急ぐぞ、ついて参れ」
「はっ」
馬の腹を蹴り、速度を上げる御館様と俺に、大声で秀吉が何かを叫ぶ。が、もう耳には届いてこない。その代わり、隣を走る御館様の呟きが聞こえた気がした。
「光秀、お前もうるさい男に好かれたものだな」
その声は、いつになく柔らかく聞こえた気がした。