第8章 触れる
「ならば、こうしてやろう」
俺はそう言うと、ひいろに貰った手拭いを手に取り、ひいろの瞳が見えぬよう、目隠しをする。
「光秀様、これはどういう?」
「俺に見られるのが恥ずかしいのならば、見られているのが分からぬようにしてやったまでだ」
「しかし、これでは…」
「先程散々見ていた身体だ。今度は触るだけで感じてみろ。お前のことだ、頭の中で思い描けるだろう。それに俺は、触れているお前を見ていたい」
「光秀様!そんな…………
分かりました。絵師としての勘を試してみろとおっしゃるのですね」
「まぁ、そんなところだ」
「では、受けてたちます」
ひいろの口角がにやりと上がる。そして、大きく深呼吸をすると、ひいろの纏っていた空気の質が変わる。絵師として、本気になったということなのか。目隠しで見えてはいないが、今ごろ強い真っ直ぐな眼で、俺を見ているのだろう。
そう考えるだけで、ぞくりと身体の芯が疼いた。俺の意図とは違うが、目隠しをしてひいろが俺の身体に触れる。それだけで、身体の熱が上がるようだ。
俺はただ、ひいろの姿をゆっくりと眼で堪能したかっただけなのだが、ひいろの理解はもっと純粋なものだった。そんな狡さに後ろめたさを感じるものの、目の前には、目隠しをして俺の素肌に触れるひいろがいる。触れてしまいそうになる自分の手を膝に置き、軽く拳を握った。