第8章 触れる
「私の身体…ですか?」
「俺が見せるなら、お前も見せてもよかろう」
ひいろは、俺の言葉にたいした感情の変化も見せず、少し納得のいかないような顔を見せる。
「私の身体などが、光秀様に見せて頂く対価になるとは思いませんが」
「それは、俺が決めることだ」
「………わかりました」
そう言うと、ひいろは納得いかないような表情のまま立ち上り、俺に背を向けると、するすると帯を解きはじめた。余りにも自然な、迷いも恥じらいもない動作に、俺はふと考える。
以前から思ってはいたが、ひいろは自分の価値を分かっていない。自分がどれだけ、男の目を引く存在なのかも知らず、無防備にさらけ出す。自分が誉められても、冗談だと思い信じようとはしない。何故か自分という存在を、低く評価しているようで、番頭が『危ういところにいる』『もっと自分を愛して、大切にして欲しい』と言っていたことを思い出す。そこにひいろの根底となるものがあるのだろうか……。
衣擦れの音に思考を戻すと、すでにひいろは両肩から腰の辺りまで浴衣を落としていた。白い肌が、俺を誘う。