第8章 触れる
「そうだな、ならば対価が必要だ」
「よろしいのですか?」
「あぁ、いいだろう」
「ありがとうございます、光秀様」
嬉しそうにほほえんだひいろの目は、すぐに強い光を帯びて、絵師の時に見せる眼になる。
やはりこの娘は、絵というものに魅入られるているのかと、改めて感じる。だからこそ、あれほどの生きた絵というものが描けるのだろう。いつか番頭が、『絵のために男を抱いた』と言っていたことを思い出す。そして、花街で抱いた女の言葉も……。
『あの娘の背中には刀傷がある』
あの時女はそう言っていた。ひいろを抱いた男が言っていたと。あの女の言うことが真実だとは思わないが、興味はある。噂ならなぜそんな噂が出てきたのかと。今が確かめる機会なのか?
俺は一呼吸間をおき、たいした意味もないような口ぶりで話し出す。その裏にある意図が見えぬように。
「対価だが、そうだな……では、お前の身体を見せてもらおう」