第8章 触れる
「光秀様?」
ひいろの声で、我にかえると、ひいろが驚いたように俺を見ていた。
「あぁ、すまない。どうした?」
「光秀様でも、考え事されることがあるんですね。何だか少しでも気を許して頂けているようで、うれしいです」
ひいろが、嬉しそうに大きく微笑む。つられて笑みを浮かべそうになるのを何となく抑えて、話を戻す。
「で、どうした?」
「あぁ、ごめんなさい。こちらを御覧いただけますか?」
そう言われひいろの手を見ると、手拭いが1枚広げられていた。そこには、白から濃い水色へと色のうつろいが流れるように染めこまれていた。
「ほぅ、美しいな。色の濃淡も良いが、色そのものが鮮やかにでている」
「ありがとうございます。花簪のお礼です。お使い頂けますか?」
「有り難く頂こう。お前が選んだのか?」
俺の問に軽く頬笑み、少し恥ずかしそうにひいろが答える。